第29章 暴こうとした罪の罰を知らぬ振り
どことなく、不自然な空間で歌い終える。
黙ってても仕方ない。
できるだけ普段通りに「帰ろう」とリヴァイに言うと、「まだ、歌ってねえだろ」と言われて気付いた。
今夜は最後の歌を歌ってない。
そうだね、と笑顔で返して締めの歌を歌う。
いつもよりも感情が昂るのを感じる。
今度こそ歌い終わって、二人揃って帰り道を行く。
その間もゲルガーさんに飲まされそうになったことや注意を受け不本意だった。とかを話して、いつも通りリヴァイは一言二言返事をする。
そう、いつも通り。何も難しくない。
見掛けによらず優しいリヴァイはいつも通り宿舎近くまで送ってくれた。
これでいい。この距離感でいい。
考えてみれば俺がアイツに拘る理由はない。
ただファーランたちと同じ歌が聞きたいしアイツの歌は悪くない。それだけだ。
いつもの起床時間より早く目覚めた。
昨夜は久々の立体機動だ、と興奮して眠りにつくのが遅かったのにスッキリとした目覚めだ。
「おっはよ〜ティアナ!」
「おはようございます。ハンジさん」
「今日はモブリットが訓練みるから、頑張ってねー!」
「はい!」
まずは訓練の準備をして、朝ごはんをちゃんと完食。
兵士の基本は体から。
「張り切ってるね。でも力が入り過ぎると危ないから気をつけてね」
モブリットさんがポンっと肩を叩いて訓練のメニューを説明する。
まずは、軽く近距離の移動。ふわりと重力から離される瞬間が好きだ。
次は高低差のある移動。スピードを間違えると怪我に繋がるから気をつけないと。
「ティアナ!降りておいで!」
指示に従い着地すると、まだ力み過ぎらしい。
「んー、そうだな。ちょっと走り込みしよう。」
グラウンドに移動して始めはジョギング程度に。徐々にスピードを上げる。
なんとか走り込みを終えると息が上がってしまってる自分が情けない。明らかな体力不足だ。
「少しづつ、体力を戻そう。暫くは走り込みと筋トレ重視でいくからね。」
つまり、暫くは立体機動は出来ない。
第3医療隊でも筋トレはしていたけど、やっぱり運動が足りなかった。
休憩を挟んで、その日は走り込み続けた。