第29章 暴こうとした罪の罰を知らぬ振り
訓練が始まる前日に酒を飲もうとしていると、ナナバさんが面白半分に言ったせいで、ゲルガーさん共々、エルヴィン分隊長から注意を受けた。
訂正したかったけど、ゲルガーさんの余計なことは言うな。の圧に負けてしまった。
エルヴィン分隊長は偶にはみんなと夕食を食べに来て騒ぎに出くわしたらしい。
流れにのって食堂のテーブルを囲んでいるとハンジさんも来て明日からの訓練について会話が弾んだ。
テーブルの横をリヴァイが通り過ぎたのをエルヴィン分隊長が引き止め、夕食を誘う。断るかと思ったけどトレイをテーブルに置いて黙々と食べ始めた。
さっきまでの雰囲気を壊したくてリヴァイに話しかけると無難な答えが帰ってきた。
ハンジさんが「ほんとに愛想がないなぁ」なんて言ってるとリヴァイは鋭い視線で「お前らがこいつを甘やかすから、あれこれ言われるんじゃねえのか?」
冷たいけど、真っ当でもある言葉に反論なんて出来ない。
居心地が悪くて、でも離れることも出来ないでいるとエルヴィン分隊長が静かにリヴァイを抑える。
「そう思うのは、お前の勝手だ。しかし少なくとも私はティアナを評価している。」
乱暴にトレイを持ってリヴァイは行ってしまった。
シラケてしまったのか、さっきまでの賑やかさはなく隣のナナバさんが優しく背を叩いてくれた。
お風呂に入って、いつもなら出ている時間だけど気が進まない。
でも、自分から壁を作るのも避けるのも嫌だった。
私と関わりたくなければリヴァイが来なければいいだけの話。
ヴァイオリンは持たず身一つで、抜け出した。
言わなくてもいい事を言った自覚はある。
それでも困ったように笑いかけるティアナが線を引いたのはわかった。
それなら、それでいい。壊れるなら壊してしまう方がいい。そう思った。
エルヴィンがアイツを庇うまでは。
焦りと苛立ちとが俺にドロドロとした感情を呼ぶ。
ここに居たくない、サッサと立ち去るに限る。
そう思ったのに俺はいつもの場所に来ている。
迎えにこそ行かなかったが、ティアナは来るとわかっていたし、アイツの歌は落ち着くから丁度いい。
リヴァイの姿を見つけて何処かホッとしたのと同時にガッカリするような気分だ。
リヴァイは何をどうしたいのか、私はどうしたいのかわからない。
それでも私は無言のリヴァイの前で歌った。
