第23章 話したい
一人になったリヴァイは項垂れ、前髪を握った。
こんな事が言いたかった訳でもティアナを責めたい訳でもない。
ただ、開いてしまった距離を何とかしたかった。
(クソっ)
ガチャ。ノックもなしに開くドアに目をやるといつも通りのハンジが入ってきてリヴァイの対面に腰を下ろした。
「リヴァイ、満足かい?」
誰が見ても”満足”はないのにハンジは臆せずに言い放つ。
黙っていると更にハンジは続ける
「あなた隈が酷いね、ちゃんと寝てる?寝不足でティアナにも八つ当たりしてるの?」
「そんなんじゃねえ」
「そう。ま、気が済んだなら帰ろうか。ティアナ泣かせただけだけどね」
「さっき部屋用意しろと言ってたろうが」
「ん、別にそんなのいいじゃん。帰りが深夜になろうが私は構わないよ」
「まだ、帰らねえ」
キッとハンジに強い視線を向けると苛立つ程に飄々としていたハンジが怒声をあげる。
「はあっ?あなた達に何があったのかは知らないけどチャンスはあげたよ!まだ彼女を傷つけ足りないのか!」
「帰りたきゃ、お前だけ帰れ。俺はあいつに謝らなきゃなんねえ」
リヴァイから似合わない単語をきいたハンジは冷静さを取り戻した。
「でも、もうティアナは会いたくないとおもうよ」
「それは俺でもお前でもねえ、アイツが決めることだ。」
「…あなたの部屋は前回と同じ部屋だ。…ティアナにもう一度話せるか聞いてみるかい?」
「いや、いい。」
「言っとくけど、これが本当にラストチャンスだ。私も含め、これ以上ティアナを傷つけるのは許さないよ」
「わかってる」
「私はここの責任者とも会うから先に行くよ」
出ていこうとするハンジが振り返ってリヴァイに先手を打つ。
「一番難しいやり取りは素直に話すことなんだ」
パタン。音も静かにドアが閉まるとリヴァイは頭をあげ、用意された部屋へと向かった。必ず彼女は来る。と信じながら。