第21章 巡回公演
戻った当日は二ファやケイジ、アーベル、ハンジ班で普段は行かない兵団御用達の酒場で盛り上がった。ほんの少しだけお酒を。なんてのが甘かった。ハンジさんに初っ端から喉が焼けるような強いお酒を注がれ、飲み干す前に次から次へとグラスを渡される。
「もう、むりで、す」
「大丈夫、大丈夫いけるって」
だんだん思考がにぶくなって、、
「もっとぉーのむー!モブリットにまけなぁい、」
「ありゃ、流石に飲ませすぎたかな?こんな絡み酒になるとは思わなかったよ」
「あんたが注ぎまくったからでしょうが!!」
「あー、とうとうモブリットさんまで…嫌な予感したんだよね。」
二ファ達が飲みすぎておかしくなった私を放って先に帰った後もハンジさん、モブリットさんと飲み続けたのは翌日痛む頭と胸焼けに苦しむ中で消えた記憶の先を教えてくれた。
「あれ、ティアナ顔色悪いね、今日から打ち合わせなのに。」
「調子悪いのクルト。早く今日は終わりたい」
「お酒の匂いがそんなにしちゃ体調の一つや二つも悪くなるだろうね。で、馬車には乗れる?」
「無理、クルトお願い」
「仕方ないなぁ。じゃ、今日だけは休んで明日からちゃんとしてよ?」
とにかく何であれ今日は休んでいいことに心からホッとした。
翌日、何とか持ち直した私は迎えに来たクルトと兵団近くの宿で昔馴染みと再開した。
「!レオ、ナ?」
「アーリー!!」
私が託した楽団のレオナはすっかり大人の女性になっていて別れた時の幼さは消えていた。
「アーリーとまた会えて一緒に歌えるなんて夢見たい!」レオナが飛びついて抱き締める。上品なローズの香りがフワリと届き懐かしくて涙腺が緩む。
私がアーリヤとしてレオナやクルトと過ごした日々は決して短くない。
「ほらほら、二人とも泣かないで」
クルトが楽しそうに私たちの再会を喜ぶ。
しばらく抱き着いて離れないレオナの髪を撫でながら優しい時間を過ごした。
お互い沢山の思い出や近況を話したかったけれど時間は有限。最低限の打ち合わせをして事前に許可を取ってある(エルヴィン分隊長の計らいだ)兵団内の離れたゲストルーム利用とセッションをしても大丈夫な場所で歌合わせをすることになった。
その話し合いの最後に私は以前と同じ音域では歌えないとクルト達に伝えた。