第21章 巡回公演
リシナが持ってきてくれたお茶を楽しみながら、これからについて話し合ってる内に面会時間は終了した。
「しばらくの間ローゼに滞在するから、また来るね」
クルトはそう言って去ったのだけど。待ってました。とばかりにリシナに深夜まで根掘り葉掘り聞かれたのはクルトを恨みそうになった。
「聞いたか。2週間後後、楽しみだよな、シーナでも流行りの公演なんてよ!」
「聞いた聞いた!どんなんだろうな、、貴族もこぞって公演に詰めかけるんだろ?想像できんな!」
どいつもこいつも”巡回公演”に浮かれてやがる。
どんな公演だろうが俺にはどうでもいい。
それよりも久しぶりに来ているらしいティアナだ。
ハンジがずっと騒いでいたから連れ回すと思っていたが本部には到着しているのか、していないのか。
「チッ」
見えない姿を振り切るように普段通りにしていれば、アッチからもコッチからも”巡回公演”の話ばかりだ。
何度も話し合ったけど結局クルトの意見が通ってしまった。
根回しもバッチリの状態。何よりも頷かなければ公演しないと脅してくるなんて…貴族並みに意地が悪い。
馬車に揺られながら目の前のクルトを睨んでも何処吹く風。もしリヴァイの眼力があれば少しくらいは怯んでくれただろうか。
「そんなにイヤ?」
「イヤ」
「全部手配済みだから心配しなくても大丈夫!ほら、ハンジさん?とかも喜んでたし」
「私は引退し」
「引退じゃない。」
クルトの表情と声が鋭くなって。それきり私たちは目的地まで視線を逸らし無言で揺られる。
次第に兵団本部が近づいてくる。あれ以来だ。
まだ、そんなに時が経ってないのに早く戻りたくて仕方ない。
「おっかえりー!」
相変わらず元気なハンジさんが強すぎるハグで出迎えてくれた。
「たっ、ただいまで、す」
「寂しかったー!たまにはエルヴィンもいいことするよ!」
そう。最後の決め手はエルヴィン分隊長。
長期休暇がいつの間にか申請、受理されていたのも、滞在予定の部屋も皆と再会できるのも。
「じゃ、行こっか。部屋の準備もバッチシ!」
ニシシと悪い笑顔でハンジさんは私の手を引いて中へと進む。
あれ?クルトは…ああ、きっと織り込み済みなんだ。
どこまでも準備周到なエルヴィン分隊長に思わずクスリと笑った。