第20章 ひと時の安らぎと第3医療隊
「ごっめーん!忘れてた。これ、みんなから」
翌朝、早くに本部へと戻るハンジさんから綺麗にラッピングされたプレゼントを貰った。
「みんなにありがとうと伝えてください。ご武運を」と伝言する。
「任せて、ちゃんと伝えるよ」
ハンジさんはニカッと笑い、リヴァイは無表情で馬の支度をしていたけど、出発の際リヴァイは自分の額に優しく触れて「またな、ティアナ」と言って馬を走らせた。その後ろ姿が見えなくなるまで見つめた。
あれからの日々は飛ぶように過ぎ、壁外調査の前日を迎えた。私は壁外調査にはいけない。皆が無事であるよう祈ることしか出来ない歯がゆさを感じながら、眠れない夜を過ごした。
「ゆっくりとこちらへ担架を!」
「あとで、鎮痛薬を打ちますから少し堪えてくださいね」
「マリオットさん、手を貸してください!」
いつもは比較的のんびりとしているはずの第3医療隊は壁外調査前日から忙しくなり壁外調査後からは戦場だ。
処置はある程度されているが生々しい傷を負った兵達が次々と搬送される。振動を少なくするよう工夫された荷馬車から急性期棟へ。
外も中も人も物も駆け巡る。こめかみから滴る汗を腕で拭い、次を次を。
「ティアナ!こっちに!!」
返事をするより動く。うめき声と痛みを訴える声。
搬送中、傷が開いてしまった兵の傷口を圧迫止血し、中にいる医療兵へ。
もう誰の血なのかわからない血や泥に前庭は染まっている。
いつもはリハビリを頑張る人も自室から出てこない。
「ユンカー班長!こちらは!」
「5号室へ!急げ!」
搬送が終わっても、ここからが第3医療隊の仕事。
トリアージをして傷を確かめ一緒に送られたカルテに、軍医と医療兵で目を通し、指示通りに動く。
ユンカー班長は医師として、治療とペインコントロールを。
「ティアナ!手が足りない!君でいいから、彼に筋肉注射を!」
考えてはいけない。
躊躇ってはいけない。
この日に備え、微力ながら緊急医療についての訓練も積んだ。
第3医療隊総出で搬送された兵士の対応に追われる。
見覚えのある人もそう出ない人も。
今は考えるな。目の前の事だけを確実に…