第20章 ひと時の安らぎと第3医療隊
茶葉を用意して部屋を出ると疑いに満ちたリヴァイが私をジッと睨んでくる。あえて明るく「茶葉どうぞ!2種類あるから気分にあわせて選べるよ」
頷くリヴァイからさっきまでのきつい視線はなくなった。
「ありがとな」
「どういたしまして。こっちの茶葉は大きめの葉だから蒸らしは長めにしてね」
「わかった」
廊下を歩きながら給湯室へと行き2種類それぞれを淹れる。談話室は2ヶ所あると説明すると先程とは違う所が良いとリヴァイが要望した。
「ハンジさん達と合流しないの?」
「うるせえ奴と茶は飲みたくねえ」
「それ聞いたらハンジさん、泣いちゃうよ」
「知らねえよ。今日は散々話したから、もういい」
「ん〜、わかった。別のとこに行こう」
そんな次第でほとんど人のいない談話に向かい合わせで話を続ける。
話が尽きないとはこの事だと思う。
リヴァイからは本部にいるみんなのことをポツリポツリと。
私からは身の回りの事やここでできる訓練内容なんかを。
あまり興味無いはずなのに聞き上手なリヴァイはいろいろと聞いてくれる。
それで、聞きたくて聞きたくないことを。
「ねえ、壁外調査っていつなの?もう決まってるよね?」
一瞬だけ瞳が揺れるリヴァイはそれでもハッキリ伝えてくれた。
「二週間後だ」
「そう…」
本当は近々だろうと薄々感じていた。
最近備品や消耗品の搬入が多かったから。
「リヴァイ。」
「なんだ」
私は身を乗り出しリヴァイの額にそっとキスをした。
大きく瞳を開き口が半開きになっているリヴァイの顔から身を離す。
呆然としてるリヴァイに笑顔になってしまう。きっと私は今とてもイタズラに成功した子供みたいな笑顔をしてる。
「は?なに、してんだ?」
「おまじない。無事帰還しますように」
耳を赤くしているリヴァイはフイッと顔を横にした。
「ごめんなさい。突然すぎたね」
「そういう事じゃねえだろ、誰にでもやってんのか?テメェは」
今度は私が妙な表情になった。と思う。
「まさか。そんな訳ないでしょ」
「どうだかな。…帰還したら、また来る。」
「うん。待ってる。美味しい紅茶用意して待ってるよ。」
「それまで誰にもまじないはするなよ」
口の端を上げ意地悪そうな笑顔しながらリヴァイは言った。