第20章 ひと時の安らぎと第3医療隊
壁外調査の後は本部と第1医療が地獄の続きだと思っていた。
実際には第1医療で前線不可と判断された兵達は第3医療隊が受け持つ。
残念ながら到着の間にも逝ってしまった仲間もいる。
「ここまでだ。」
心臓マッサージに反応しなくなった人が死亡宣告を告げられ開ききった瞳の瞼をおろす。
その間にも呻きながらも生きようと叫んでいる負傷兵の傷を処置していく。
本来ならば医療の心得のない私はリハビリ棟で大人しくするのだが、今回は違った。被害が大きいのだ。
リハビリ棟には最低限の人員を残し今と明日を山場にする彼らのそばを飛んでくる指示を受ける。
「こっちを見て!」意識を繋ぎ止めるために頬を強めに叩く。
「ティアナ!どいて!」
シュニッツェルさんの怒号が飛ぶ。すかさず負傷兵の上に乗り心臓の辺りを強く叩く。言葉に出来ない音をたて息と意識が戻ってきた。
血の匂いで頭がクラクラする。
壁外だって巨人に襲われた人は沢山見たし被害だって見た。けれど、こことは違う。
明日を迎える為に命を繋ぎ止める為ひたすらに動く。
「〜ころ、し…く、れ…」
激痛で死を望む人に鎮痛剤を打ち、ベテランが来るまで付け焼き刃の処置をする。
「大丈夫かい?」
「はい…」
「顔色が悪い、少し休みなさい」
「いえ!」
「命令だ。人を救おうとする場で倒れる訳にはいかないだろう?ちょうど交代になる、少し休みなさい」
ユンカー班長の厳しい指摘を受け渋々と急性期棟から近くのシャワールームへと。
血で真っ赤になった手を流す。
流れていく水が排水溝に薄い赤になって消えていく。
仮眠室で横になっても眠れるはずはなくジリジリと時間が過ぎていくのをただ待つ。リヴァイは?ハンジさんは?みんなは?
搬送から3日経ち、急性期棟ではまだ予断を許さない状況は続いているものの私は通常通りのリハビリ棟での勤務に戻った。
リハビリ棟のみんなもピリピリしていて諍いが多い。
いつも落ち着いた人ですら一言で不安定になってしまう。
同僚のリシナはこの空気にも慣れているのか諍いを宥めてスタッフルームに戻ってきてアドバイスをくれる。
そんな日々に私も心を休めないままでいた。