第19章 夜の静寂に響く
「なら、俺は精々死なねえで待っててやる」
無愛想で縁起でもない言葉に笑っていいのか怒っていいのか、分からないけどリヴァイが待っててくれるんだ。想像するとリヴァイだけじゃない。ハンジさんも二ファもナナバさんも、みんなが待ってくれてる気がした。それが嬉しくて寂しくて。
「おい、もう一曲歌ってくれ」
首を縦に振って今日一番だと思う笑顔で頷いた。
夜の静寂が音に色を添え月の優しい光がスポットライトのようにティアナを照らす。
満ち足りた夜だった。どこか欠けてたものが、そこにある。
(俺はこいつの歌が聞きたかった。)
でも明日からはまた、あの変哲のない毎日が来る。
(できるのであれば、このままで)
リヴァイは自分らしくないセンチメンタルな感情に戸惑いながら心の中で嘲笑った。
アンコールを受けて歌ったのはイザベルとファーランが好きだった歌。
リヴァイと共有できる思い出。この歌を歌うとリヴァイは何度か瞳を閉じる。どうかその瞳には笑うイザベルとファーランがいますよう。
ティアナは思いをのせ歌う澄んだ歌声が月夜に響いた。
「久しぶりにこんなに歌ったよ」
「ほお、お前の事だから一度歌うと気が済むまで歌ってそうだが」
「さすがにね、一人だと自分の為にしか歌わないから何曲も歌わないよ。寒いし」
空に手を伸ばしながら戯けて言うティアナは少し寂しそうに見えた。
「あのユンカー、だったか?あいつとは来ねえのか」
「?班長?呼ばないし、ここで歌ってるのも知らないよ」
「そうか」
「なんで?」
「いや、患者の前で歌うとかも気晴らしになるんじゃねえか」
「人前では歌わないよ。あ、そう言えばさ今度王都で有名な音楽隊が慰問コンサートにくるよ、本部にも」
「??なんだ、そりゃ」
「何でもないよ、そろそろ戻る?紅茶もなくなったしね」
フッと笑いながらリヴァイは意地悪を言う。
「そうだな、顔が赤いうちに戻るか」
「えっ!」
ヤダ赤い?!と頬を抑えながら、リヴァイの紅茶のせいだ。とボヤくティアナを次はいつ見られるだろうか、近いうちがいい。とリヴァイは思っていた。