第19章 夜の静寂に響く
夜の冷えた空気の中、あの時と同じように話しながら来た道を戻る。
主にティアナが話し、リヴァイはそれに一言か二言返すだけだったが、それで構わなかった。
「モブリットさんは、きっといつか倒れる、ハンジさんのせいで」
「お前らはアイツを甘やかしすぎなんだ」
「そうかも」
クスクスと笑いながらハンジについて語り、ティアナが最近のことを話したりする。
なんてことない会話で、この時間が終わるのが惜しいような気がして。
建物に着くとシーっと口に人差し指を添え夜間入口から上がって3階へ。
スタッフやゲストのフロアにはまだ、人がチラホラと行き来している。
「そう言えば茶葉!」
昼間のティアナオススメ茶葉についてらしい。
「まずは荷物片付けてから給湯室に行こうよ」
反対する理由もないのでティアナの後を着いていく。
「リヴァイは談話室で待ってて良いよ」
「俺はここに来て待ってるばかりだな」
「だって、お客様でしょ」
駄々をこねる子供に言い聞かせるようなティアナが気に入らない。客だが、間を置かれたくない。
「見学だ」
キョトンとして次の瞬間には優しげな笑みを浮かべ、わかった。と素直にティアナは答える。
「先に私の部屋にブランケット置いて行こっか」
過去に襲われたこともあるのに全く警戒心も何もないティアナに呆れを通り越し恐怖を感じる。
「お前、大丈夫か?」思わずティアナに問いかけるも、その問いの意味を知るはずもなくティアナはのんきに「何が?」と逆に聞いてくる始末。
ハァとわかり易すぎる態度をリヴァイが取ると「ごめん」とティアナが謝った。とりあえず今夜注意したことを思い出してくれたようだ。
「ちょっと待ってて」
ティアナの部屋の横で、待っているとゴトンと音がした。直ぐにティアナはひょこっと顔だけ出して花瓶落としちゃった。コソッと言う。
「待て、片付けたのか?」
目が泳ぐティアナに眉を顰め、「掃除はしてんだろうな」と低い声で聞けば更に挙動不審になり「ちゃんとしてるから!」と押し返された。
本当か確かめても女の部屋にはさすがに勝手に入り(下心がなくとも)掃除をする訳にはいかん。と自制心を強くして、ティアナが部屋から出てくるのを待つしかなかった。