第18章 新天地
あれから、どこにも居ねえ……
異動になるのも、本部内ではないことも分かっていたが全く姿の見えなくなったティアナ。
誰かに聞こうかとも思ったが、それはそれで癪に障る。
恐らくエルヴィンはもちろん、ハンジも知っているだろうがリヴァイは気にはなっても聞きたくなかった。
「リヴァイ!危ない!!」
「っ!」
訓練中にうっかりよそ見をしていると他の兵士がバランスを崩し、アンカーがこちらへ打たれたらしい。
咄嗟に避けたが掠ってしまい二の腕に抉られるような痛みがした。
「珍しいね、あなたが怪我するほどボケっとしてるなんてさ」
リヴァイとバランスを崩した兵士も何とか着地すると訓練を見ていたらしいハンジが声をかけてきた。
「……うるせえよ」
「さ。ジャケット脱いで腕出して。止血だけしとこう。医務室まで血がテンテンするのは嫌だろ」
素直に腕を出すと、ハンジが傷口を圧迫して止血する。強めにハンカチで傷を圧迫すると赤に染まる。
「んー、止まんないね。ちょっと止血するのも医務室がいいかなあ。そのまま抑えて行ってきなよ」
横にはアンカーを刺しそうになった兵士が謝罪し、医務室までついて行くと言ってきた。
「一人で行ける。ワザとじゃねえんだ。いちいち頭下げんな」
「わあお、エラく素直じゃん!」
「てめえは黙れ。鬱陶しい」
痛む傷口を抑えて不本意ながら医務室へと足を向けるとハンジが着いてきては呑気にあれこれとちょっかいを出してくる。
イラつきが高まり蹴りのひとつでも…と考えてると「最近はどうしたのさ」真剣な声と顔でハンジがたずねてきた。
「別に」
「そお?落ち着かないように見えるけどなんで?」
「お前がそう見てるだけだろが」
「ふぅん…医務室着いちゃったね、ちゃんと手当てしてもらいなよ!」
じゃっ!と手を振ってバタバタと去っていくハンジに苛つき、蹴って置けば良かった。と思いつつ医務室の扉を開いた。
ツンとする薬品の匂いに顔を顰めるが医療兵が駆け寄り治療台に怪我をした腕を乗せ「沁みますよ」と言いながら消毒液を流した。
傷口は思ったよりも深かったらしく医療兵が止血剤を打って傷口を縫います。簡潔に言った。
「それで構わない」
本部一の無愛想男に麻酔と針を準備しながら最近の医療兵達で話題の人物について治療がてら話し始めた。