第18章 新天地
ユンカーは広い建物内の主に担当する棟をひとつずつ丁寧に案内し職員、すれ違う患者達に簡単な紹介をしていった。
「シュニッツェルさん。新人さんのティアナ・ディーツさんです。」
「まぁ、若い力が来たわね!ここでは、力仕事も多いから頑張ってね!」
「はい、よろしくお願いします」
「お加減はいかがですか、ケーラーさん?」
「一日では何も変わらんですよ」
ケーラーと呼ばれた男性はワハハと豪快に笑いながら少しずつ歩いていく。
「焦ってはいけませんよ、あぁ、こちらは新人のティアナ・ディーツさんです、セクハラしないでくださいね、え、僕が?そんなことはしないですよ。」
軽い世間話をしては次々と話しかけ、話しかけられもする。
ある程度の案内がすむとスタッフルームでお茶を飲むことになった。
「まぁ、ここはのんびりしてますが、なにかあったら僕やシュニッツェルさんに話してください」
本当に、本部とは違ってのんびりと時が流れている。
「お役にたてるように精進します」
「意気込みはわかりましたが、”焦らない”がここのモットーです。それとまずは患者さんについて覚えてくださいね」
「はい、了解しました」思わず敬礼しようと腕をあげると、その腕をユンカーに掴まれ下ろされた。キョトンとするティアナがユンカーの顔を見ると幾分か悲しそうに見ている。
「ダメです、ここでそれは禁止です」
フルフルと顔を振ってその理由を説明する。
「ここは壁外調査で負った負傷者のリハビリ施設です。彼らが現場に戻ることはありません。だから心臓は捧げられないんです。」
「………すみません。思慮不足でした」
「いいえ、気をつけて欲しいだけです」
「わかりました…」
「元気を出してください、患者さんは直ぐにこちらのことに気づきますからね」
やはり穏やかな声で窘めるユンカーは本部にいる誰とも違う雰囲気を纏っていた。
「いたー、シュニッツェルさんに聞いたらここだって言ってたからさ〜。探したよー!」
「ハンジさん!」
「ティアナ、ユンカーは優しいだろ?!エルヴィンみたいに陰険じゃないし、ミケみたいに鼻で笑わないしさ!」
「僕だって少しは腹黒です」
「えっ、腹黒いの?うちのティアナに触らせないよ!?」
「ハンジさん!」