鈴の音が届く距離で2〜王政改革の章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第5章 : 新章 偽りの令嬢❶ お茶会編
お茶会の会場とは思えない大きな館の前に、多数の馬車が停まる。
その中から着飾った貴族が続々と降り立ち、嬉しそうに入口に立つ執事に招待状を見せて入って行った。
「めんどくせぇ…」
正装したリヴァイはそんな光景を目にし、馬車の中でため息を吐いた。
調査兵団に馬車を借りる資金は無かったが…今回はハーヴィン侯爵の招待客という事で迎えの馬車が来た為、それに2人は乗り込み会場に来ていた。
「そう言うな、今日は好きなだけ紅茶が飲めるのだからな。」
そう言って苦笑したエルヴィンが先に馬車を降り、リヴァイも渋々後に続く。
そして招待状を見せると、執事は会釈をした。
「調査兵団:団長のエルヴィン・スミス様と、兵士長のリヴァイ様でいらっしゃいますね。」
「はい。本日はお招き、ありがとうございます。」
エルヴィンも会釈する。
「主人が別室でお待ちですので、ご案内致します。」
執事は別の者にその場を任せ…エルヴィンとリヴァイを、別室へ案内した。
「こちらで少々お待ち下さいませ。」
執事はまた会釈し、部屋を出て行った。
そして暫くすると…2人を招待したハーヴィン侯爵家当主、クレイ・ハーヴィンが現れた。
「はじめまして、私が当主のクレイ・ハーヴィンだ。」
そう言ってハーヴィン家の当主は、笑顔でエルヴィンに手を差し出す。
貴族は普通、兵士に握手は求めない。
王家に最も近いと言われている憲兵団の幹部でも、貴族…しかも公爵や侯爵家の人間と握手を交わす事はないのだ。
だが目の前の若き当主は…最も下位と言われている調査兵団の団長に、当たり前のように手を差し出したのだ。
エルヴィンは少し躊躇い…だがしっかりとハーヴィン侯爵の手を握り、挨拶を交わす。
「はじめまして。調査兵団:団長、エルヴィン・スミスと申します。」
「君がエルヴィンくん…そして君が、リヴァイくんだね。」
エルヴィンの手を離し、今度はリヴァイに向き合う。
リヴァイはムスッとしたが、軽く会釈をする。
「リヴァイくんは噂通り…貴族が嫌いみたいだね。」
「申し訳ありません…」
エルヴィンは慌てて謝るが、彼は特に気にしていないようだ。