第1章 夏に金魚の例えもあるさ【煉獄杏寿郎】
「本当によかったのか?」
『ええ、いいんです。わたしが連れていっても、お世話してあげられないかもしれないし』
結局ポイは、小さな椀に1匹を掬い上げたところで破けてしまった。
本来なら持ち帰ることのできるその金魚を、わたしは黙って桶に戻したのだ。
「そうか?君は面倒見が良いと思ったが」
『……買い被りすぎですよ。
だって、それこそ。
金魚よりも先に死んでしまうことだって、あるかもしれないじゃないですか』
そうだ。
そうなのだ。
わたしはもうすぐ、炎柱の継子として、最終選別へ赴く。
生きて帰れる保証など、何一つないのだ。