• テキストサイズ

浪漫はいつも血の匂い【鬼滅の刃】【短編集】

第1章 夏に金魚の例えもあるさ【煉獄杏寿郎】




「……それ、は」





『今だけ、今だけで良いのです。





どうか、名前を呼ばせてください』









瞬間、わたしの鼻孔はどこか懐かしい匂いで満たされた。





ああ、これは、煉獄さんの匂いだ。






鍛練をした後に、少し休もう、今日は夕日がやけに綺麗だ、と目を細めていた煉獄さん。






任務に向かうその背を見送るわたしに、振り返って手を振った、煉獄さん。







熱を出したわたしを心配そうに見つめて、目が合うと微笑んだ、煉獄さん。









わたしは、いつから、好きになったんだろう。








「……杏寿郎だ」




『……はい』




「呼んで、みるといい」





『……杏寿郎、さん』









つたない響きだったと思う。






何せわたしは、彼の背に腕を回すことすら忘れて、ただひたすらに、その匂いに溺れないように、必死だったから。







抱き締められていることすら信じられずに、なんだか、泣きそうになったから。









「もう一度、呼んでくれ」




『杏寿郎さん』





「……すまない。




本当に、すまない。










俺も君を、好いているんだ」





/ 14ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp