第8章 楽園の果実
一係の刑事課オフィスに常守と狡噛以外の4人が集結していた。照明を落とした薄暗い執務室の奥に、大きな画面があり、彼らはその写し出されたものを見つめていた。
「桜霜学園美術教師・柴田幸盛(しばた ゆきもり)……ということになっているが、実際は介護施設に収容された、全く無関係な老人だった」
征陸が正面を向いて立って喋る。彼の言葉を聞きながら宜野座、縢、六合塚も表示された情報に集中している。
「彼の経歴が改ざんされ、教員に成り済ます上で利用されていた」
「完全な偽造経歴じゃないところが、悪質かつ巧妙っスね」
と、デスク上にオモチャを並べてある縢は手を当てて喋る。
「しかし教師なんて、人目に触れる仕事に就くとは、大胆なのか間抜けなのか」
そう言う宜野座に「それがですね」と話す六合塚。
「映像データは全てクラッシュ。辛うじて残っていたのはほんの短い音声ファイルのみ——」
六合塚は、カタカタと操作しながら話す。
「残された手段は昔ながらのモンタージュ写真と似顔絵作成の二つだけ」
もちろん、どちらもやってみました。と言う六合塚に宜野座は「その口ぶりからすると外れか……」と呟く。
「ええ」
「結局、佐々山が撮ったピンボケの写真しか手がかりは無いってか……」
そう言った征陸はフン、と息を鳴らしたのだった。