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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第8章 楽園の果実



《老いを克服することが、これ程までに幸福なこととは……ははっ。……機械の身体を受け入れない限り、理解はできないでしょう》
《……しかし、最新の技術をもってしても脳の寿命は150年程度とされています。脳の完全な機械化はまだまだクリアできていない課題が山積みとか……》

「彼の理想を追い求めた行動は、不自然の混乱を生むようにも思うのだけれど………そんな人に一体何の用があるの?」
『———サイボーグ化して生きようとする彼の人生に、少々興味があってね』
 そんなことを言う彼はそれと亜希、と言葉を付け足す。
『僕が置いといた本を読んで影響されたのか知らないけれど、先程の”台詞”は、なんだか亜希らしくないね』

《はははは……限界まで酷使すれば、まだ私の脳には余裕がある》
《その間に、ブレイクスルーが起きることを期待しますよ》

「うふふっ、バレちゃったかしら?」
 彼女はソファーに移動する。
『亜希がそうやって強気になるのは、すぐに分かるさ。……まぁ、そんなところも君の可愛いい一つかな』
「……その言葉、褒め言葉として受け取っておくわ」
『そうしてくれると助かるよ。………じゃあ、また』
「えぇ。また今度」
 と、通話を切った彼女はそのまま横たわった。

《なるほど。……もしもそれが起きたとしたら……》
《左様。———不死の時代の到来です》

 亜希は電話をしていた携帯を右手に持ったまま腕をストン、と下ろした。


「肉体の衰えの過程も、それはそれで美しいと思うのに……」
 そう言う彼女は続けて話した。


「間違って悪い方の実を食べちゃわないように、気をつけなきゃね」


 目線を天井に向けながら呟いた彼女は、瞼をゆっくり閉じて眠ってしまった。
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