第7章 沈黙は、語り続ける。
———翌日。コミッサちゃんのホロを纏いながら桜霜学園の生徒に聞き込みをしていた征陸は見覚えのある人影に後ろを振り向いた。
「こ、コウ!?」
そう叫んだ征陸は反射的にホロを解除してしまう。その場にいた女生徒、征陸に聞き込みをされていた二人は「きゃぁああっ」とお互いに体を抱きしめながら叫び声をあげる。「……あ」と事態に気づいた征陸は狡噛の後を追うのであった。
一方、廊下で窓から中庭を覗いていた宜野座は学園内へと歩みを進める狡噛を見つけ「あの馬鹿ッ」と声を荒くして狡噛の元へと走っていく。
狡噛の前に立ち止まった宜野座。大人しく立ち止まった狡噛は何も発しない。
「待って下さい!」
と、奥から走ってきた常守が二人の間に割入って両手を広げてそう言った。
「生徒の中に、容疑者がいるんです!」
常守は宜野座に訴える。狡噛は、目の前に居る二人を避けて再び歩き始め、ある場所へと向かう。
昨夜、常守は狡噛と二人で”所沢矯正保護センター”に向かった。そこは、犯罪係数300以上の重篤患者が隔離されている潜在犯隔離施設だった。初めて訪れた常守は、「一体何を?」と狡噛に聞いた。聞かれた本人、狡噛は「今回の死体の加工には『元ネタ』がある」と言い、どうやらその筋の専門家に話を聞きにいくらしい。
いつでも処刑室に早変わりしてしまう監房。そんな厳重な警備が敷かれている施設の廊下を歩き続けて、狡噛が向かった先は足利 紘一(あしかが こういち)のところだった。
全身ボディペインティングの足利は「流石に背中は無理だろ」と言った狡噛に「身体は柔らかいのよ」と甲高い声で言葉を返した。芸術作品が積み重なった檻の中で狡噛が見せた死体の写真に「王陵牢一のアートそのまんま」と言った足利は、一冊のアート本を見せて「そっくりでしょ?」と言う。そんな彼は「浮ついた流行り物じゃなくてきちんと根源的なテーマが見て取れたわ」と牢一の作品について話した。
足利に話を聞いた二人、常守と狡噛は早速操作資料から『王陵牢一』と引っ掛かる項目を探した。桜霜学園に同じ苗字の生徒が在籍していることに気づいた常守は「血縁者ですよ!!」と狡噛に声を上げた。