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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第7章 沈黙は、語り続ける。


「……芸って?」
 常守が尋ねる。
「今回の2件からは、歪んだユーモアやメッセージ性も感じない。美しく悪夢的で芸術作品のようだが、”何か”が致命的に欠けている」
 強くそう言う狡噛に「……何か、とは?」と問う常守。

「………”オリジナリティ”……」
 背筋を伸ばした彼は、そう呟いた。

「オリジナリティ……ですか?」
 復唱する常守。
「こんな手間を掛けた殺しなのに、犯人の主張が薄い。少なくとも俺には感じられない」
「主張って……人を殺すのに只の殺意以外に理由なんて……」
「藤間幸三郎にはそれがあった。奴にとっての殺しは、只の素材の下準備でしかなかった……。そこまでは今回の殺しも共通だ」
 デスクの前に歩いてきて狡噛は言った。
「だがそこから先は、死体の作風というか……まるで違う。全く別の犯人像が見えてくる」
 煙草を口に咥えた彼は両手でキーボードを操作しながら犯人の人物像を語り始める。

「知能が高く、シビュラ判定では高収入の職業を割り当てられている。しかしかなり若い。もしくは精神年齢が低い人物……。死体を性的に侮辱する要素の少ないことから、幼児期の虐待は受けていないと推測出来る」
 次々に語られる犯人の正体について、目をパチパチとさせながらモニターに視線を移した常守は「それは?」と狡噛に尋ねた。

「プロファイリングもどき……」
 と答えた狡噛は、煙草を灰皿に押し付けて火を消した。
「監視官、外出許可を申請する」
「え? それって私が同伴しないと……」
 と言う常守に「だからついて来いと言ってるんだ」と返す狡噛。そんな彼に常守は嬉しそうに笑みを見せた。


 暗闇の中、狡噛は常守と車を走らせてある場所へと向かったのであった。
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