• テキストサイズ

【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第7章 沈黙は、語り続ける。




 雨がしとしとと降りそそぐ中、公安局刑事課オフィスで狡噛はモニターに向かっていた。そんな様子の彼に、常守は怪しいと感じて隣に寄りひょいとモニターに顔を覗かせた。

「やっぱり事件の情報……!」
 目の前に写るモニターには見覚えのあるグラフが表示されていた。それを見た常守は「唐之杜さんの仕業ですね……」と少々怒り気味で言う。言われた彼は悪びれる様子もなく、ミントグリーンの外装をした箱からトントン、と煙草を一本取り出しジッポで火をつけてそれを口に咥えた。

「……どう思う? あんたも目を通してはいるんだろ?」
 そう言う狡噛に、「どうって言われても……」と呟いた常守は「薬剤の分析結果からも、3年前の事件と同一犯の可能性が高まったとしか……」と意見した。そんな常守に対して狡噛は新たな意見を述べる。

「……俺は、全く逆の感想を抱いた」
「逆……?」
 あぁ、と返す狡噛に煙草の煙が自分の方へと流れてきて「うっ……」と両手で顔を覆い隠すように煙を避ける常守(どうやら煙草は苦手な様子だ)。彼女に気にする様子もなく「3年前の事件だと、例えばコイツだ」と紙の事件概要を常守に渡す。

「犠牲者の一人、汚職疑惑のかかった衆院議員でな。……犯罪係数の虚偽申告も疑われたが、再計測を拒否。マスコミや野党の追及を『記憶にございません』とか、カビの生えた言葉で切り抜けようとした。……それが死体で発見された」
 狡噛はさらに説明を続ける。
「頭蓋骨が綺麗にカットされて、脳がスッポリくり抜かれた状態でな……。被害者の肛門には、記憶について重要な働きをするとされる脳のパーツ、海馬が突っ込まれていた」
「…………」
 くるりと椅子を回した狡噛は喋る。
「佐々山の殺され方もそうだが……あの時の犯人は、殺し方や死体の飾り方に———」
 何らかの意味合いを持たせようとしてる節があった、と立って言う狡噛。
「被害者は4人……。死体が発見された場所は、ホログラム・イルミネーションの裏側……高級料亭、動物園、アイドルがライブ用に組んだステージの真上……」
 彼は歩きながら煙草を吸ってそう喋る。
「しかし今回は2件続けて『公園』だ」
 舞台設定に芸がない。と、咥えていた煙草を離して煙を吐き出した。
/ 149ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp