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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第7章 沈黙は、語り続ける。



「貞淑さと気品、失われた伝統の美徳……。それが、桜霜学園の掲げる教育の理念。……男子には求められない、女子だけに付加されるプライオリティー」
 王陵は、絵を描くのを中断して話を続ける。
「それを刻みつけられた後で私たちは、深窓の令嬢という”ブランド品”として出荷され、そして良妻賢母というクラシックな”家具”を求める殿方に購入される。『結婚』という体裁でね」
 彼女は、さらに物言う。
「この学校にいる生徒は、誰もが淑女という名の工芸品に加工されるための素材なんです。磨き上げられ完成されるのを待つ原石………悲しく、そして退屈な命ですわ」
 気の毒そうに、王陵は言った。
「他に花開くはずの可能性は、いくらだってあるのに」
 そう語った王陵に「面白い見解ではある」と彼。
「そこに君の初期衝動がある訳か」
 そしてこんなことを聞く。


「新しい作品を仕上げたら、今度はどこに展示するつもりだい?」


 聞かれた彼女は「そうですね、何処がいいかしら」と笑みをこぼしながら考えてこう答える。


 ———なるべく、大勢の目に付く、賑やかな場所を探さないと。




 窓越しに写る彼の無表情な顔から覗かれる目は、屍の様な冷たい目だった。

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