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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第7章 沈黙は、語り続ける。





「警備体制……一段と厳しくなりましたわね」


 雨がしとしとと降り注ぐ桜霜学園。校舎敷地内を警備ドローンが巡回している中、美術室でキャンバスに絵の具を塗りながら表現者、王陵璃華子はそう言った。そんな彼女は”作品”を仕上げている最中だ。———そして、室内にはもう一人。カーテンが留められ、雨粒がついた窓から中庭を眺めていた彼は、王陵の言葉にこう返す。

「葛原沙月に山口昌美。———相次いで二人もの生徒が、同じ手口の犯罪の餌食になった。これで学園側が何の対策も講じなければ、保護者が黙っていないよ。加えて、容疑者は元教諭の藤間幸三郎……。公安局の捜査の焦点もここ、桜霜学園に絞り込まれる」
 腕を組んでいた彼はそう言う。薄暗い室内は、雲の切れ間から光が差し込んで微量の明るさがある。部室の壁には数枚の絵画が飾られている。
「しばらく身動きが取れませんわね……。早く次の作品を展示場所まで運びたいのに……」
 彼は、そう言った王陵の方を向く。そして、こう彼女に質問した。


「……なぜ、同じ学園内の生徒ばかりを素材に選んだのかな?」


 聞かれた当の本人、王陵は口元に薄笑いを見せてこんなことを彼に聞く。
「……全寮制女子学校というこの学園の教育方針を、槙島先生はどうお考えですか?」
「……時代錯誤ではあるが、それ故に希少価値がある、かな」
 そう答えた彼は、「今の時代になおも、昔ながらのスタイルで娘に修学させたいと思うなら、ここしか他にない」と話す。
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