第6章 変わらぬ愛の花言葉
暗闇の室内で王陵璃華子は”彼女”を真空パックに入れて、スーツケースで蓋をした。そして彼女はそのまま携帯で誰かに電話をかけた。
「……チェ・グソン?」
王陵は電話の相手であろう人物の名を呼んだ。
「また荷物の運送をお願いできるかしら」
『お待ちしてました。準備は万端、整ってますよ。いつものダストシュートへどうぞ』
電話の相手、チェ・グソンはそう喋る。
やがて王陵は部屋を出る。スーツケースを引きながら木製の床を歩き、その場所へ向かう。ちょうどケースが入る穴へ王陵はガコン、と入れた。そのまま彼女はある施設だった場所へ向かう。入り口の前で認証装置に携帯をかざして、その建物に入る。コツ、コツと階段を降りて石の床の上に降り立つ。王陵は自分の響く足音でここは大きな空間なんだと認識する。
手術台に体を預けている男が見える。王陵はその男のもとへと歩いていく。わずかな明かりで照らされそこは薄暗い。
「お早いお出ましで」
先ほどの電話相手、チェ・グソンは彼女にそう言う。
「それにしても槙島先生は、赴任してきたばかりなのに、どうして学園内にこんな場所があると知っていたのかしら……ゴミ処理施設の地下室だなんて」
辺りを見渡しながら王陵は言う。
「元々はリサイクルボイラーの発電室だったのが、改装で閉鎖された時、図面からの抜け落ちたみたいで」
杜撰なもんです、と腕を組みながら言う彼。
「———それで、薬の方は?」
「そちらに」
彼は手でそれを示しながら言う。———そこにあるのは、多数あるガソリンタンク、のようなもの。
「……別に俺の専門は荷運びじゃないんですがね。まっ、今回は手当も弾んでもらえてますし」
そんなことを言う彼を差し置いて王陵は作業着に着替える。王陵は手袋をつけ始めた。
「こんな可愛いお嬢さんのお手伝いってんなら……まぁ文句を付ける筋合いではありませんな」
王陵は、ガソリンタンクを両手で持って大きな水槽にその液体を入れ始めた。