第6章 変わらぬ愛の花言葉
「死体は、葛原沙月さんだった」
トン、と霜月の机に両手を置きそう話す川原崎。
———放課後の教室で、川原崎の声を聞き「らしいね」と返した霜月は、タブレットで本を読んでいた。
「……葦歌ちゃんが、昨日から欠席してる……」
心配そうな様子で話す川原崎対して再び「らしいね」と即答する霜月。
「ねぇ、ちょっと……真面目に聞いてよ……っ」
川原崎は屈んで喋る。
「聞いてるよ」
タブレットをコトンと置いた霜月は川原崎に「大久保さんだけじゃない。B組の山口昌美(やまぐち まさみ)も欠席が続いてるってさ」と言った。
「……多分、この学園でよくないことが起きている……」
手を組みながら霜月は話した。
「……それで?」
川原崎の方を向いて言う。
「それでって……」
今まで机に手を置いていた川原崎はその手を離す。
「よくないことは最初から近付かない。噂話もしない」
そんな霜月の台詞に川原崎は、意味がわからないと言うように「……何それ……」と言う。
「迂闊に動くと、本当に危ない気がする……」
前を向いて言う霜月の言葉に声が詰まる川原崎。でも、と彼女は言う。
「葦歌ちゃん、私達の幼馴染じゃない……」
霜月はタブレットの縁を人差し指でトントン、とさする。何かを考えているのか、しばらくして彼女の口が開かれる。
「……王陵璃華子……」
「……えっ……」
その唐突な言葉に川原崎は驚く。
「大久保さん、かなり入れあげてたんでしょ? 向こうも案外、満更でもなかった様子だし」
霜月の言葉に川原崎は視線を落として「うん……」と返事をした。
———彼女に言った言葉が後に悲劇になるとは、霜月美佳はまだ知らない。