第6章 変わらぬ愛の花言葉
「……後から分析して分かったのはあの日、佐々山が亡くなった後に、あいつの端末情報が途絶えていたことだけだった。しかも道のど真ん中でな」
「周囲の防犯カメラの映像とかは……」
「勿論確認したさ。……けれど、一切亜希の姿は映っていなかった」
狡噛は、ソファーに腕を置きながら話す。
「———この仕事を長年やってるとな、偶に嫌気が差して逃げ出す奴が多く居るんだ。だからギノはあいつに『逃亡したんじゃないのか』と言っていた。……だが俺は思わん」
「その根拠は?」
常守が聞く。
「只の直感だ」
狡噛のそんな言葉に常守は愕然とした。
「『妄想は大概にしろ』と何度も言われた。けど、あいつは逃げるような奴じゃない……そう思ったんだ」
狡噛の話は続く。
「毎日を善く生きて楽しもうとしていた亜希が、こんなことで逃げ出すと思うか? 文句の一言二言言うはずだ。……あの日からしばらくして、あいつの家を訪ねたみたが反応は無かった。あの日以降、姿を消してしまった。遺体も見つかっていない。……黒幕と何か接触があった。そしてそれに巻き込まれた」
———俺はそう踏んでいる。
狡噛はそう、強い口調で言い放った。狡噛の声が、室内に響いた。
「亜希を、必ず取り戻す」
———狡噛の強い想い。その想いは常守も感じた。