第6章 変わらぬ愛の花言葉
『一本一本違うから、大切にしてあげないとね。弾いて弾いて……使いこなしていかなくちゃ。音も全然違うしね』
『……そんなに音って違うものなのか?』
『———馬鹿ね、よく聴いてなさい?』
「……楽器の音の違いが分からない俺は馬鹿だと、そう言われたさ」
フッと笑いながら言う狡噛。
「……そう言えば時々、あいつが紅茶を淹れて飲ましてくれる時があったんだ」
「あの、オフィスにあった紅茶ですか?」
常守がデスクにあった瓶を思い浮かべて言う。
「あぁ、それだ。この時代にふさわしくない———最初は、変なものを好むやつだと思ったんだ。だけど亜希の淹れた紅茶は美味しくてな———」
『お前、今の時代こんなものをよく好きになれるな? しかも本物の茶葉だろ?』
『いいから飲んでみなさい? 飲まず嫌いは良くないわ。それに、あんな変なセラピーよりもリラックスできるはずよ』
『……へぇ、紅茶って美味しんだな』
『だから言ったでしょう?』
「とにかく、自由に生きてた。———俺は、居なくなってから気づいた。あいつは、俺の人生を豊かにしてくれる奴なんだと……」
ここで、常守が狡噛に質問をする。
「真壁さん、彼女が居なくなったことについて、何か手掛かりはありますか?」