第6章 変わらぬ愛の花言葉
「佐々山執行官って、どんな人だったんですか?」
そんな常守の問いに数秒無言を続け、無遠慮にこう言い放つ。
「クソヤローだった」
常守はその答えを理解することができず「は?」と無意識に言葉を漏らす。それに対して狡噛は「女好きでね」と手振りを交えて説明する。
「仕事中だろうがオフだろうが美人がいたら見境なしに口説いてた。唐之杜や六合塚なんて、何度尻を触られたことか。その度にブン殴られるのに全く懲りる様子がなかったな……」
狡噛は佐々山について語りだす。
「まぁでも亜希だけは上手く、あいつをかわしていた。……そう言えば、一度も被害にあったことが無かったな……」
———常守の前で彼女の名前を口にする狡噛は、無意識だろうか。今はもう遠くなってしまった出来事を懐かしむ様子で狡噛は「そして佐々山、あいつは短気だった」と語り続ける。
「……一度火がつくと手が付けられなくてなぁ。……ある時色相チェックに引っ掛かった容疑者宅に踏み込むと、まさに攫った女性にのし掛かってるところだった」
狡噛は、当時の様子を思い出しながら常守に話す。彼は、話しながらもあの時の佐々山との会話を思い出すのであった。
『ここか? 色相チェックに引っ掛かったっつーならず者ん家は』
『お前だってならず者だろ』
『ちげぇねぇ』
『いつも言ってることだが、やり過ぎるなよ』
『はいはい』
『ハイどーも公安局でーす!!』
『……っ!?』
『たっ………助けて……!!』
「……佐々山は危うくその男を殺しかけた。当時俺は監視官だったから一応止めたが………内心楽しい奴だと思ってた。女好きで凶暴で、実に楽しいクソヤローだと」
『……やり過ぎだ』
『………いや、大丈夫…………殺してねぇよ』
『ドミネーターで”一瞬”じゃ足りねぇ。オイタするとイタイ目みるってのを教えといてやらねーとな』
———瞼を閉じて狡噛は言う。
「……少なくとも、あんな死に方をするような男じゃなかった」
彼の言葉からは怒りがこもったような、そんな感情の入った台詞が聞いて取れた。