第6章 変わらぬ愛の花言葉
いつもの刑事課一係の執務室。しかしそこには狡噛と常守の姿はない。
一段落ついたところで宜野座が「整理する」と立ち上がり言った。
「目黒区代官山の公園で発見されたバラバラ死体は……」
と、宜野座が液晶キーボードを操作し資料を出す。
「葛原沙月、全寮制の女子高等教育機関桜霜学園の生徒だ。一週間前から行方不明になっていた」
「……おい、桜霜学園って……」
征陸が宜野座の方を向いて言う。
「標本事件の容疑者、藤間幸三郎の勤務先………でしたよね」
六合塚が言う。宜野座は首を縦に振り肯定する。
「遺体は特殊な薬剤に侵食され、タンパク質がプラスチック状に変質」
宜野座は再びキーボードを操作し、グラフを表示させる。
「分析の結果、これは3年前の事件で使われた薬品と同一であることが判明した。確かに同一犯の可能性は高い」
「謎の殺人鬼が3年ぶりにカムバックってわけか……」
征陸が喋る。「ギノさーん」と手を上げながら縢が宜野座を呼ぶ。
「ホントにコウちゃん外して良かったんスかぁ? あの人標本事件の捜査って続行してたでしょ?」
「何か新しい手掛かりとか掴んでたかも」と縢が言う。しかし「……奴の報告書には目を通してある」とそれを否定するような言い振りで宜野座はこう言う。
「あれは只の妄想の羅列だ」