第6章 変わらぬ愛の花言葉
「……これって、まさか………」
常守は、そう呟く。以前唐之杜から聞いたあの事件のことを思い出した。
公園のど真ん中の噴水塔に飾られた”遺体”。規制線が張り巡らされたその場所に狡噛と常守、宜野座が居た。
「……今度の捜査からは外れてもらうぞ、狡噛」
そんな宜野座の台詞に常守は「え?」と体を揺らして驚く。
「何でだ、ギノ」
狡噛が尋ねる。
「これはお前が冷静に対処出来る事件じゃない。余計な先入観に囚われた刑事を初動捜査に加えるわけにはいかない」
宜野座がそう答えると「そんな……っ」と常守は必死の表情で「でもまだ”標本事件”と一緒ってわけじゃ……」と口を滑らせる。思わず言葉にしてしまったことに気づいた常守はあっ、と両手で口を塞いだ。
「宿舎で待機だな?」
沈黙が流れたあとに狡噛が言った。「そうだ」と宜野座が同意する。そんな一連の流れに常守が慌てふためく。狡噛が宜野座の前から立ち去ると常守はどうすればいいのか、とどうもできずに動作が止まる。「常守監視官」と宜野座が呼ぶ声が聞こえると「は、はい……!!」と常守は返事をした。
「どうやら事情は知っている様子だし、説明の必要はあるまい。狡噛が妙なことをしでかさないよう付きっきりで監視しろ。……狡噛執行官から目を離すな。それが今回の君の仕事だ」
冷たい雰囲気の宜野座は常守にそう言った。