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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第5章 狂王子の帰還



「……プラスティネーションって本来は遺体の水分と脂肪分が一旦抜けきってから樹脂を染み込ませるから、仕上げるまで1ヶ月は掛かるんだけどね……どっかの天才が水分子と直接反応してポリマー化する薬剤をこしらえたみたいなのよ。これがあれば数日間漬け込むだけで人体をプラスチックの塊にしちゃえるってわけ」
「そんな薬どうやって……」
 常守が尋ねる。
「まー明らかに専門家の仕業だったからね。捜査の焦点も薬学・化学のエキスパートに絞り込まれていったんだけど…………その途中で佐々山クンがね……」
 「あと、そのすぐに亜希も姿をくらませちゃって」と言う唐之杜の声は悲哀に満ちていた。常守は沈黙を続ける。

「結局全っ然別件で捜査願の出てた高校教師のアパートから問題の樹脂が見つかってね……ほらコイツ」
 と、再びキーボードを操作してプロファイルを表示させる。

「藤間 幸三郎(とうま こうざぶろう)」
 と唐之杜の言う人物は男性で写真の左目下にホクロがあった。
「……コイツが失踪した途端に犯行も止まったし、間違いなくクロだったはずなんだけど……状況証拠だけだしねぇ………まぁ実際の所は迷宮入り。それに藤間には化学の素養なんてなかったから問題の樹脂を誰が調合したのか、それさえも謎のまま……」
 その唐之杜の言葉に「共犯者がいた、ってことですか?」と聞く常守。
「そもそも用途を承知の上で樹脂を作ったのかどうか、それすらも分からないんじゃ共犯と呼んでいいのやら……入手経路も謎のままだし」
 「今となっては」と言う唐之杜は顔を常守の方に向けて続けてこう言う。


「神のみぞ知る……よね」

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