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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第5章 狂王子の帰還




 數十分して縢が作っていた料理が出来上がり、二品三品ローテーブルに並ぶ。常守は先ほどの会話から「縢くんって恋したことあるの?」と話題を振った。

「……あのね朱ちゃん、俺ってば人生の先輩よ? 恋どころか悪い遊びは一通りこなしてるんだぜ?」
 と縢は悪びれもなく言う。
「健全優良児の朱ちゃんなんて想像もつかない世界を覗いてきたわけさ」
 その台詞に常守は「え〜?」と返す。すると縢は「例えばコレ」とカウンターにあるお酒を指差す。常守にはそれが伝わらなかったのか、彼女はそれを見て「ジュース?」と聞いた。そんな常守に両手を広げて「ちがーう!! 酒だよ、本物の酒!! 征陸のとっつぁんのお裾分け!!」と縢は説明した。胡椒を挽きながら「今じゃ皆、中毒性が怖いからって安全なメディカルトリップかバーチャルばっかじゃん?」と現代のこの生活に対して気に入らない様子で話す。
 常守は酒、と聞いてこの前のアバター乗っ取り事件で狡噛と征陸の三人で御堂を追い詰める時に征陸が酒を口の中に入れて使った光景を思い出す(彼が言うには「違法ホログラムの対策にゃ強い酒が一番」らしい)。

「……それ、飲むんだよね? 火つけるんじゃなくて……」
 常守が一応聞いておこうと思ったのか、酒を指差して縢にそう伺う。勿論、縢はその現場に居合わせていなかった為なんのことだか分からずに「はぁ?」と首をかしげるが続けて「まっ、こういうイケナイお楽しみも今じゃ潜在犯(オレら)の特権ってわけ」と話す。その言葉に実感がわかない常守は「ふーん……」と返した。

 そんな常守は目の前にあった料理をつまみ食いして「うわっ美味しっ」と喋る。その感想に「これが本物の料理ってもんさ」と自慢するように縢が言うがそんなこと御構い無しに次々と料理を二口三口と口に運ぶ常守を見て「こらこら! 酒のつまみだって言っただろ?」と注意する。常守は「ケチ……」と拗ねたように言った。そんな彼女を見て縢は言う。

「それとも朱ちゃんも試してみる? 俺も酔ったら口が軽くなって知ってることとか喋っちゃうかもよ?」
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