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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第5章 狂王子の帰還




 公安局ビル———その最上階、88階、局長執務室。
 そこに、監視官である宜野座は立っていた。


「頑張ってる様子じゃない」
 公安局局長。シルバーグレーでショートカットの女性、眼鏡を着用している中高年の禾生 壌宗(かせい じょうしゅう)はモニターに表示された常守のデータを見て言う。

「まだ経験が足りない分、心得違いをしている部分も多々ありますが、優秀な人材なのは事実です。将来的には有望かと」
 宜野座は、常守朱に対してそう評価する。
「そうあってくれればいいが……」
 と禾生は机の上で手を組み、「君の同期生達のような残念な結末に至る可能性も決してゼロではない」と話す。数秒沈黙したのちに「はい、局長」と宜野座は少し重くなってしまった口を開いてそう返す。

「君たち監視官の職務は過酷だ」
 禾生が言う。
「多くの犯罪者、そして執行官たちの歪んだ精神と直面しても尚」と言ったところで組んでいた手を崩す。そして続けて「任務を遂行できる不屈の精神が必要なのだ」と話す。
「君とて油断は禁物だぞ、宜野座くん」
 液晶キーボードを操作して禾生は言う。
「犯罪係数と遺伝的資質の因果関係はまだ、科学的に立証されたわけではない。……だが、裏を返せばまだ”無関係”だと証明されたわけでもない」
 その禾生の言葉に宜野座は歯を食いしばり目をきっとさせる。


 ———君が父親と同じ轍を踏むことのないよう、心から祈っているよ……。


 その、禾生の言葉に宜野座は「肝に銘じておきます」と返すのであった。

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