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【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第4章 はじまりは唐突で不確実に幕が上がる




 ———ある日、常守は征陸の部屋にいた。壁に背を向けて立ちっぱなしの常守に対して征陸は座ってイーゼルに掛けてある木の枠に貼られたキャンバスに油絵を描いていた。色が征陸の手によって丁寧に塗られていく。「今時随分と変わった趣味ですね」と常守が征陸に言うと「絵描きも刑事もまずは観察眼ってのが一番肝心になる。結構通じるところがあるんだぜ」。そう、征陸は描く手を止めずに話したのだった。

 しばらく間が置かれて征陸は常守にこう投げる。
「狡噛のことが聞きたいのかい? 亜希のことも聞きたそうな様子に見えるけどねえ」
「分かりますか」
 と常守は肯定する。
「ま、まずは狡噛の方だよな」と話し続け様に「あんた、”あいつ”と妙に縁があるからな」と言う。そう言われた常守はこう口を開く。
「……あの人にどう接していいのか未だに分からないんです。もっと理解しろって言う人もいますし、同じ人間だと思うなと言われたこともあります」
「そっちは宜野座監視官の台詞だな。……あいつらしい」
 常守の後半の台詞に征陸が反応する。
「犬は犬、飼い主は飼い主。その一線を踏み越えない関係……それがお嬢ちゃんにとって一番だと思うねえ」
 パレットにのっている絵の具を筆につけてそう言う。はっきりそう言われた常守は吐息をもらす。そのまっすぐな目で征陸を見る。
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