第11章 間章 -Interlude-
時計の針が二十三時を過ぎた。
亜希は机に向かったまま、大きな欠伸をする。
「眠いなら寝たらどうだい?」
「もうちょっと」
「さっきから同じページを読んでいるよ」
「見ないで」
「見えるんだから仕方ないだろう」
亜希は眠気を振り払うように頭を振った。
「明日は学校なんだろう?」
「うん」
「なら寝た方がいい」
「分かってる」
そう言った直後、亜希の頭がゆっくりと下がった。
数分もしないうちに、机に伏せたまま寝息を立て始める。
槙島は本から顔を上げた。
「……亜希?」
返事はない。
立ち上がり、彼女の傍らへ歩み寄る。
右手にはまだペンが握られていた。
それをそっと抜き取ると、亜希が小さく身じろぎした。
「……しょーちゃん……」
「うん?」
もちろん返事はない。
夢でも見ているのだろう。
槙島は微かに笑った。
ソファに置かれていた薄いブランケットを取り、亜希の肩へかける。
机の上には進路資料。
そして、その向こうには閉じられたヴァイオリンケース。
幼い頃から彼女と共にあったもの。
けれど今は、音を失っている。
槙島はケースへ視線を向けた。
明日なら弾いてもいい。
亜希はそう言った。
「楽しみにしているよ」
眠っている少女へ、小さく呟いた。