第11章 間章 -Interlude-
――それから幾年もの月日が流れた。
「慎也。……あなた、そう言えば午前中、佐々山君と騒がしくしていたけれども、何かあったの?」
夏の公安局のテラス。
監視官となった亜希の腕には、あの頃と同じヴァイオリンがあった。
狡噛慎也は少し言いづらそうに答える。
「…………今週の金曜日、俺の誕生日なんだ」
「あら、そうなの」
亜希は楽しそうに笑った。
「何か欲しいものはある?」
あの日と同じ問いを、今度は別の男へ投げかける。
そして狡噛慎也もまた、彼女の音楽を望んだ。
亜希は笑って約束した。
三日後に、と。
けれど、その約束が果たされることはなかった。
槙島聖護は聴いた。
狡噛慎也は聴けなかった。
かつて一人の少女が奏でた同じ旋律を。
――その二人が互いの存在を知るよりも、ずっと前の話である。