第11章 間章 -Interlude-
「そういえば明日は、しょーちゃんの誕生日ね」
ぽつりと呟いた亜希の声に、ページをめくる音が止まった。
……返事がない。
不思議に思って顔を上げると、向かいのソファに座っていた槙島聖護が、本から視線だけをこちらへ向けていた。
「……何?」
「いや。覚えていたんだね」
「去年も聞いたもの。それくらい覚えてるわよ」
「……そうだったかな」
「そうよ」
亜希は呆れたように言って、再び机の上へ視線を落とした。
広げられた参考書と問題集。その横には進路に関する資料が何枚も重なっている。
――高校三年の夏。
世間では進路を決める時期だと言われているが、亜希にとっては、どこか他人事のように感じられていた。
選択肢なら、すでにシステムがいくつも提示してくれている。自分はただ、その中から最も適したものを選べばいい。それなのに、何故か決めきれずにいた。
「それより、しょーちゃん」
「うん?」
「いつ来たの?」
今更ながら尋ねる。学校から帰ってきたときにはいなかったはずだ。
着替えて、机に向かって、それから――いつの間にか、そこにいた。
「少し前かな」
「少し前って?」
「亜希が同じ問題を三度解き直しているのを見たよ」