• テキストサイズ

【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第11章 間章 -Interlude-





 彼女の台詞に狡噛は、佐々山との会話を思い出した。


『なーんか亜希ってお前だけに優しいし……脈はあると思うんだよな〜……』
「……何の話だ、佐々山」
『だ〜か〜ら〜。お前のことを見る亜希についてだよ』
「社内恋愛をしに公安(ここ)に来るなんて、お巫山戯もいいところだな」
『く〜ぅ! かったいね〜! 狡噛。お前が、初心者マークの恋愛素人なのは知ってるが、ここまで殻が硬くて全っ然割れないヒナだと俺、どうしていいかわっかんね〜わ』
「……別に、どうもしなくていいんじゃないのか」
『これだからエリートの監視官サマは……。狡噛、お前…………もうちょっとゆるく生きたら?』
「……俺が亜希に対して好意を持っていると、いつ言った?」
『言ってねーけど、でも……嫌いじゃないだろ?』
「…………」
『ビンゴだな、狡噛! お前……持つべき感情はしっかり持ってるんだな!』
「何を言ってるんだ、佐々山……」


 そんな、佐々山の言葉を思い出した狡噛は、一言、亜希にこう言った。


「亜希……お前にとって、大切な人は居るのか?」

 彼のその唐突な台詞に「はぁ?」と亜希は、脳天に一撃食らったような気がした。思わず抱えていた楽器を落としそうになりそうだ。

「それよりもあなた。ちゃんと私の質問に答えなさいよっ。なに話逸らしてんのよ」
「言いたくないならいい」
「……そんなこと、一言も言ってないでしょう?」
 と、若干早口で喋る彼女に「じゃあ」と狡噛は言う。

「お前が好きな曲、俺は聴いてみたい」
 今、ここで演奏してくれないか。と、淡々と彼の口から紡がれた言葉。それは、真剣な物言いであった。

「………………」
 狡噛の、彼らしい生真面目すぎる顔が亜希の視界に目一杯に映る。数秒ほど経ってなんだか恥ずかしくなり彼女はぷい、と彼を視界から外した。
「仕方ないわね……」
 なんでそんなに聴きたいのかしら、と亜希は左腕をあげて楽器を構えた。いや、正確には構えようとした。しかし、構える動作をする最中に彼女は直感的に何かを思ったのか、顎を乗せずにそのまま左腕とヴァイオリンを下に降ろしたのだった。

/ 149ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp