第10章 聖者の晩餐
船原が壁際で三角座りをしながら狡噛の方を見つめている。
狡噛は、一係に応援要請を入れたところで、黄色い塗装の携帯トランスポンダをスーツの内ポケットに入れた。
———二人から距離を置いたところで、狩人の泉宮寺は身を潜めていた。
赤い散弾実包を猟銃の元折れ部分から入れる。
カチャン、と弾の装填が終わった泉宮寺は呟く。
「……何をこそこそやっている?」
狡噛は、動き出す。
「ここにいろ!」
と、船原にそう叫んで通路を駆けて行く。
泉宮寺は走る狡噛を狙う。狡噛の目の前には青い猟犬が見える。
すると、並べられていたドラム缶が勢いよく飛んでいくのが見えた。五月蝿い音と共に現れたそれは、ドミネーターが入った、専用の運搬用のドローン。ドローンは隠れている狡噛を見つけてその方向へ走って行く。
「邪魔が入ったか」
泉宮寺は狙うのをやめ、そう呟いた。
ドローンが狡噛の方へ近寄って行く途中で青い猟犬のドローンが素早く走っていき、走行中の運搬ドローンを思い切りガンッ、と横に倒した。ドミネーターが入ったドローンはザザザ、と床を滑っていく。閉ざされていた中が音を立てて開いた。ドミネーターを手に入れるため狡噛は素早く走って行く。
たどり着いた狡噛は、ドローンの中に入っていたドミネーターを取り出した。
『ユーザー認証 狡噛慎也執行官』
ドミネーターを青い猟犬に向ける。が、猟犬は先端に針がついた鞭のような尻尾で狡噛を叩こうとする。
後方へ避ける狡噛。再びドミネーターを猟犬に向けた。