第9章 狩りに最適な日
「殺しても構わないって言うんですか!? 宜野座さん友達だったんでしょ!?」
「……これで狡噛が死ぬ羽目になれば———」
「常守監視官。全ては君の監督責任だ」
「…………っ!」
「君がちゃんと狡噛をコントロールしていれば、こんな事態にはならなかったんだ。……どうだ?」
「自らの無能で、人が死ぬ気分は———」
常守は、宜野座の冷たい言葉に涙を浮かべた。
すると、トレンチコートに身を包んだ征陸がコツ、コツと歩いてきて「なぁ、監視官」と宜野座を呼んだ。
「…………!」
征陸は背を向けていた宜野座のことを、コートごと根元を掴み上げる様にして持ち上げた。簡単に宙へ浮かんだ宜野座は反射的に手を首元へとやった。
「それくらいにしとこうか。ちょっと陰険過ぎるぜ」
と言った征陸は宜野座をぱっと手放して左へと投げた。宜野座はガンッ、と六合塚が作業していたコンピューターの機械へとぶつかった。突然のことで声も出ない宜野座は目を丸くさせた。
当の投げた本人、征陸は宜野座にニカッと笑う。次の瞬間、馴染みのあるコール音が空気を支配した。
「……狡噛からです!」
六合塚が叫ぶ。
『こっちの位置が探知できるな!?』
『現在 コード108が進行中』
『支給応援を! 繰り返す———』
「ありったけのドローンを急行させろ!」
「でもっ、経路が……」
「手当たり次第に経路を試せ!」
手振りを交えて宜野座は叫んだ。
「一台でもいいから到着させるんだ!」