第9章 狩りに最適な日
「この辺り……局所的だけど、かなり強力なジャミングがかかってますね」
コンピューター操作をしながら、六合塚は話す。
一係は旧地下鉄銀座線のホームの跡に居た。
凸凹になったドアを目の前にして宜野座は「妨害電波の発信源は?」と六合塚に聞いた。
「南西の方角……ただ、マップ上だとこの区画、何もないはずです。昔あった貯水槽は再開発の時、耐震対策で埋めてあります」
「よし、ここに中継基地を設営する。全てのドローンは有線ケーブルで稼働させろ。それでドミネーターにも支障はない。マップデータは信用するな。隙間という隙間を虱潰しに調べろ。それと———」
「狡噛は見つけ次第、ドミネーターで撃て。警告は必要ない」
宜野座の指示に常守は「でもっ」と話す。
「まだ脱走と決まったわけじゃ……」
「その判断は、シビュラシステムが下す。狡噛に疚しいところなければ、犯罪係数にも変化はない。パラライザーモードで決着はつく」
宜野座の言葉に、コンピューター装置に腕を置いて寄り掛かっていた縢が「マジに逃げる気だったんなら容赦なくエリミネーターが起動しますよね」と話した。
「サイマティックスキャンは誤魔化せない。それで狡噛の本心もわかる」
そんな宜野座の台詞にタン、と一歩踏み出した常守は彼に向かって叫ぶ。