第9章 狩りに最適な日
泉宮寺はコツ、コツと足音を響かせ、通路を歩いていく。
———すると突然、装着している双眼鏡越しに青色の猟犬を連れて走る狡噛が横切った。
「………ほぉ」
狡噛は壁を背にして立ち止まる。数秒すると、銃を持った老人が視界に移った。その老人は迷いもなく狡噛の方へ弾を発砲させた。弾は外れたのか、彼は障害物を避けて走って逃げていく。
そして二発目の弾が打たれる。それも避けた狡噛は、右手に持っていた電気衝撃警棒(スタンバトン)、ここに来る際に常守の武装許可によって受け取った装備の一つを、老人の持っていた猟銃の銃身へと振りかざし、カキン、と金属音を鳴らした。
老人を食い止めた狡噛は再び、青い猟犬を連れて走っていく。
すると、目の前にもう一匹の猟犬、赤色のドローンが自分へと襲いかかってくるのが見えた。挟まれた狡噛は、正面を走る赤い猟犬へと跨り、暴れる猟犬を抑えつけて手にしていたスタンバトンに電気を流し、クルリと逆手持ちに変えて、それをぶっ刺した。
バチバチ、と音を出すスタンバトンを刺したままの猟犬を見つめていると刹那、ガムテープで固定された何かが目に見えた。
それは、黄色い塗装が塗られていて先ほど回収したトランスポンダの色とよく似ていた。
もう一匹の青い猟犬が追いかけてきたため、赤い猟犬から離れた狡噛。青い猟犬は赤い猟犬へと襲いかかってしまい、赤色の猟犬が投げ飛ばされる。その、投げ飛ばされた上には、多数の針がついた罠が———。
罠を見上げた赤い猟犬は、針と衝撃によって潰されてしまった。再起不能なぐったりしているドローン。狡噛は、先ほどみつけたガムテープで固定されていたものを剥ぎ取り回収する。
走り去っていく狡噛を狙う泉宮寺。発砲して彼を撃とうとするが、惜しくも弾は外れ、泉宮寺はクッと歯を食いしばった。
先ほどの船原が待っている場所へと戻ってきた狡噛は、下に降りて船原と合流する。
「狡噛さん!」
自身の名を呼ぶ船原に「走れ!」と言い放った。
「一台仕留めた。それに………後はアンテナだ……!」
走りながら言う狡噛。
先ほど赤い猟犬から剥ぎ取ってきたものはバッテリーだったのか、電源ボタンを押して、起動するトランスポンダを手にして、船原と共に通路を走っていく———。