第9章 狩りに最適な日
二人は物陰に避難した。
「今……っ、今人がいた……!」
息切れをしながら言う船原は、先ほどの鞄を抱えて三角座りをしている。
「あぁ、これで趣旨が見えた。奴ら、狐狩りを楽しむ気だ」
「か……狩り?」
冷静さを保っている狡噛は船原に説明をする。
「ドローンは猟犬役だ。怯えて逃げた獲物をプレイヤーが仕留める。……俺たちは哀れなキツネ役ってわけさ」
「そんな……っ」
「慌てるな、怖がるな。落ち着いて慎重に逃げ道を探すんだ。焦れば焦るほど、敵の思う壷だ」
狡噛は先ほど拾った鞄の在り処を船原に尋ねた。
「こ、……これ?」
と、引っ張り出して彼に渡す。チャックを開けた狡噛は中身を取り出した。
「………何?」
船原が聞くそれは、黄色い塗装の小型の機械のようなもの。
「携帯トランスポンダだな。軍用コードも使える強力なやつだ」
これなら電波妨害の中でも通信できる、と手で電源をボタンをいじる狡噛。
「助けが呼べるの!?」
声のトーンが明るくなる船原。
「……残念ながら、バッテリーと……それに、アンテナ素子が無い」
その言葉にハァ、とため息をつく船原。
瞬間、もう一体のドローンが頭上を彷徨ってるのに気付いた狡噛は彼女の頭を隠し体を小さくさせた。
「……奴らの注意をそらす。あんたはここに隠れてろ」
狡噛は立ち上がって目の前にある壁によじ登る。
「どうするつもり……?」
子声で話す船原。
「猟犬が二匹じゃ勝ち目はない。せめて片方だけでも潰さないと、このまま囲まれてお終いだ」
と言い上に登った狡噛は走っていった。