第2章 常守朱は認識する
タブレットの予備の有無を確認した常守の言葉に縢は反応する。すると、ゲームをやりながら彼はこんなことを言う。
「備品の予備は狡噛執行官が使用中で〜す」
と、少々反応に困ったことを言ってきた。常守はたどたどしくでも、と縢に返す。
「その……狡噛さんって今日は……」
この次に言い出す言葉が見つからず(と言うか言いにくく)、彼女は言葉を詰まらせる。
そして、縢はなんの悪びれる様子もなくストレートに言う。
「パラライザーで撃たれて治療中で〜す」
と、言った直ぐに六合塚が椅子に座ったままで縢の近くに移動し、読んでいた音楽雑誌を縢の頭に叩きつけた。バシッッ、と大きな音が響いた。
「いってぇー......」
と叩かれた縢は言う。彼の言い方からするにたいしてダメージは無いみたいだ。そんなことを気にする素振りもなく彼を叩いた本人、六合塚は自身のデスクにあるタブレットをモニターとの接続を解除してそれを常守に渡す。
「はい、これ使って」
常守はその言葉を聞いてタブレットを受けとった。
「あ……、は、はい!! ありがとうございます」
ようやく換えのものを得ることができた常守は安堵のため息をついた。
目的が達成され、今、常守の後ろにあるヴァイオリン——そのことについて彼女は少し二人に尋ねてみようと思い、言葉を発した。
「あの……後ろにある楽器って……」
彼女の言葉はぎこちなく、今までの流れとはあまりにも関係が無かったので若干の申し訳なさが入っていた。常守の投げかけに縢はあぁ、と発し椅子ごと体を彼女の方に向けて楽器の方を指差し、こう答える。