• テキストサイズ

【PSYCHO-PASS】名前のない旋律

第2章 常守朱は認識する


 黒髪をポニーテールにして音楽を聴きながら音楽雑誌を読んでいる六合塚のキャビネットにはネイルアートをするのだろうか、メイクボックスにマニキュアが置かれていた。一方、オレンジ色の髪を伸ばしてしていて毛先が跳ねており、左側の髪をピンで留めている、ポータブルゲーム機で愉快に遊ぶ縢のデスクには、他のゲーム機があったりキャビネットの上には動物か何かのフィギュア、更にはボウリングのピンが机の端にあった。
 どうにも居心地が悪く視線をキョロキョロさせる常守はある一点のところで目を動かすのを止め、そのまま止まる。それから彼女の頭にはクエスチョンマークが浮かんだ。



 ———あれは、誰の荷物なんだろう。……ただここ(刑事課一系)に置いてあるだけなのかな……。


 常守から見て真正面、多分普段デスクワークをする狡噛の席の反対側。——そこには、常守が20年と少し、生きてきて到底お目にかかることがなかったもの、弦楽器のヴァイオリンが机の上に裸で、ケースから出ている状態で置かれていた(すぐ隣にケースは置いてあった)。そのヴァイオリンは埃をかぶることもなく綺麗だった。


 ——常守は思った。何故、この刑事課にあるのだろうと。
 彼女が思うことは至って普通の疑問であった。……こんなところで楽器を演奏されても困るし、そもそもここ(公安局)はそんなところでは無い。——誰か、刑事の傍ら芸術活動をしている人でも居るのかな……ここに。誰かヴァイオリンを弾く人が居るのかな……この5人の中に。


 ——なんていう思考が頭を回ったが、今やらなくちゃいけないことを思い出し、立ち上がり、六合塚と縢の方に移動する。それから二人にこう尋ねた。


「……あの、すいません。タブレットって他にありますか?」
/ 149ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp