第9章 狩りに最適な日
地下の道を奥へ奥へと歩いていく狡噛。行き止まりに差し掛かったところで常守が行き止まりだと教えると、彼は応答もなく壁の中に進んでいってしまったのだ。
「聞こえますか!?」と叫ぶ常守だが彼からの反応は無し。完全に位置情報を見失い、連絡も取れなくなってしまったのだ。常守は、狡噛に「あんたが必要と判断したらそうしろ」と言われた通り即座に一係からの応援を呼んだのだった。
———時間を戻して再び一係が集う地下鉄の入り口前。
「でも、間違いなく狡噛さんはその先に進んだんです! それどころか、壁を通り抜けてもっと奥まで……」
常守は、両手を握りしめて主張する。
そんな常守に腕を組みながら「ナビの故障じゃね?」と喋る縢。
「ハードじゃなく、ソフトの問題かも」
と、セーフティフェンスの上に腰掛けながらノートパソコンで作業する六合塚は言う。
「この辺は、ろくな計画性もない再開発を何度も繰り返してたから……登録されてるデータが実態通りかどうか、知れたもんじゃないわ」
六合塚の言葉に常守は顔を暗くさせる。
「……騙されたのは、君だけじゃないのか?」
常守監視官、と言いながら腰掛けていたフェンスを降り、ジャリジャリと足音を立てて常守に近づく宜野座。先日の口論で二人の間は更に空気が張り詰めていたのだった。
「えっ……?」
「狡噛は、君の監視下を離れ、位置情報もロスト……つまり、あの男は自由の身だ」
「初めから、逃亡をする目論見でこの状況を演出したのかもしれん」
と、目を鋭くさせて言う宜野座に対し歯を食いしばり苛立ちの表情を向ける常守。数秒黙り込んだ常守は宜野座に叫んだ。