第9章 狩りに最適な日
「こんな廃れた場所に私を呼び出して、どうしたのしょーちゃん?」
しかもこんな朝早くに、と言う彼女は両手でケースを持っていた。
「夜明け直後に申し訳ない。……実はね、あと数時間後に始まる遊戯に、ちょっと亜希も手伝って欲しいんだ」
「……いつもあなたのお遊びには、私なんか手招きしてくれないのに?」
「そうだね、しかし今回は気が変わってね。……だから亜希も呼んだのさ」
「何をさせる気なのかしら?」
「いやね、亜希にはただ”観てもらう”だけでいいんだ。ただ、そこに居るだけで良いんだよ」
「……そうなの。じゃっ、こんな早くに呼ぶ必要は?」
「だから、その鑑賞の準備をするんだ。有意義に過ごすなら、それなりの準備が必要だからね」
と、言った彼は彼女を連れて奥の道へと進んでいった。
コツ、コツ、と二人分の足音が地面から響く。槙島の後ろをついて行く真壁。数十分ほど、錆びた地下鉄構内の奥へと歩いて行くと、真壁の目には更に深い底が見えた。
「ここは、一体………」
彼女は、大きなその施設に目を向けた。対戦ゲームのフィールドみたいな場所にも見える。周りを見渡すと今、自分が立っている場所は円状の通路の一部ということが分かった。下に顔を向ければ円周に等間隔で設置された明かりがある。しかし、その一番下の地面に降りれば薄暗くて手持ちの懐中電灯はないと周囲を見渡せないだろう、と判断できる。