第9章 狩りに最適な日
「……しょーちゃん。一体ここで、どんなお遊びをするの?」
彼女は、無言で通路の先へと進み続ける槙島に問うた。
「ここは、あの全身サイボーグ化の先駆者である泉宮寺豊久、彼の狩り場だ」
と、彼が歩みを止め真壁に顔を向けて言った。
「………彼が地下開発をこんな形で進めてるなんて、驚きだわ」
ふっ、と笑いながら言う真壁。
「…………もうすぐかな」
「………?」
槙島が入り口の方を見て呟いた数秒後、コツ、コツと重い音が聞こえてガンケースを片手に持った老人、泉宮寺が彼の元へと歩いてきた。
「……やぁ、槙島くん」
「今日はよろしくお願いします。それとこちらが僕の家族、真壁亜希です」
と、片手で身振りを交えて真壁を紹介した。
「はじめてお目にかかりますわね。あまり……あなたの生き方には賛同しませんけど、今日はよろしくって」
「はっはっ、これはこれは。君の血を分けた家族は、かなり強気なようだね」
「すみませんね。半強制的に連れてきてしまったもので、少々機嫌が悪いみたいです」
気にしないでください、と笑みを浮かべて言う彼に真壁は無言のままだ。
「それじゃあ、作業に取り掛かりましょう」
槙島の、その一言によって、”狩場”の準備が進められる———。
あの、悪夢がはじまる。