第6章 傷口に砂糖を(伊黒小芭内)*
軽めのキスで、一度唇が離れる。
『んなっ…にするんですか…!』
「恋人同士なら…キスくらいするだろ?」
『だから…!もう他人ですから…!』
ファーストキスがこんな風に奪われるなんて、と飛鳥は悶々としていた。
ドキドキが止まらず、顔はどんどん赤くなり身体は熱くなる一方。
「…もしかして初めてだったのか?」
『………』
小芭内の一言に飛鳥はキッと睨む。
「そんな目で睨んだって
歯止めが効かなくなるだけだ。
キスだけでそんな風になるなら
その先続けたらどうなるんだ?」
小芭内は余裕な表情で飛鳥に言う。
『…どいてください。
こんな風にからかうなんて
タチ悪いですよ。』
「からかってるつもりはない。
俺は本気だ。
いくら言葉で伝えてもお前は理解しない。
それなら無理矢理にでも
理解してもらうまでだ。」
『分かってます…!
伊黒先輩は私のことなんて
好きじゃないのに
甘露寺さんのことが好きなのに
私と付き合って…
こんな風に私の気持ち弄んで…
…私ばかりこんなに先輩のこと
好きで辛いんです……!』
「…いや、全然分かってない。
俺がどれだけお前のことが
好きなのか。」
小芭内は再度飛鳥にキスをする。