第6章 傷口に砂糖を(伊黒小芭内)*
「待たせたな、伊黒。」
「…冨岡。お前あいつから
何を聞いたんだ?」
「何も聞いていない。
ただ、別れたということは聞いた。」
「…なんでそうなってるんだ。
俺は別れ話された覚えもないし
してもいない。」
「お前…好きな奴いるのか?」
「…は?いるわけないだろ。
いたらあいつと付き合うわけない。」
「でも飛鳥はそう言ってたぞ。
自分が惨めになるって…
最近、あいつおかしいときなかったか?」
小芭内は避けられるようになってからのことを思い返していた。
連絡もなく勝手に帰られたこと、そのあと連絡しても無視されたこと…
それが関係あるのか…と。
何が飛鳥をそうさせたのか。
何故別れたと言っているのか…理由が分からない。
「飛鳥と帰る約束をした日、
誰かと一緒にいなかったか?」
義勇にそう聞かれてハッとなる。
「…甘露寺…といたが…
いや…まさかそれで…?
甘露寺はただの幼馴染だ…」
「そんなの飛鳥は知らねぇよ。
俺は知ってるから何も思わないが
知らないあいつからしたらどう思ったか…
お前、甘露寺だけには
心開いてるからな…
どうせ笑いながら話しでも
してたんだろう。
一応聞くが、飛鳥のこと
名前で呼んだり笑顔で話したりしたか?
好きって言ったりしたか?」
「………」
「…飛鳥のこと、好きじゃないなら
大切にできないなら
もうあいつに近づくな。
俺の大事な幼馴染だ。
傷つけることは許さない。」