第5章 雨のち晴れ(時透無一郎)
廊下をしばらく行くと、
大好きな人の背中が見えた。
『無…一郎っ!待って…!』
久しぶりに…数年ぶりに呼ぶ
大好きな人の名前。
彼は振り返り驚いた顔を見せる。
「飛鳥…」
「…時透。俺は先に帰るぞ。」
そう言って彼の隣にいた冨岡は
帰って行った。
私は彼の元へ向かう。
が、そのとき再び立ち眩みが。
そのまま倒れるって思ったが
痛くなかった。
無一郎が…いたからだ。
「…危なっ…。
なに無茶してるんだよ!
まだ寝てなきゃ駄目…」
数年ぶりに私に向けて言葉を掛けてくれる。
その声が温かくて嬉しくて…
気づけば私は涙を流していた。